問い合わせ対応のAI化で、コストと品質はどうなる?(前編)
コールセンターの問い合わせ対応が重要な顧客接点であることに異議を唱える人はいないだろう。だが、人手不足が深刻化し、新たな人材確保が難しい現在、対応のコストは膨らんでいる。そこで、注目を浴びているのがAIの活用だ。問い合わせ対応の最前線でAIの活用は、コスト削減と顧客満足度向上に本当に効果があるのだろうか。

重要だが、コストが膨らむ問い合わせ対応

コールセンターは企業と顧客を結ぶ重要な接点である。
例えば、商品の在庫状況に関する問い合わせ対応は顧客獲得につながり、使い方や故障に関する顧客との対話は不満解消に結び付く。
企業にとって、顧客満足度やリピート率を高める上で、問い合わせ対応は極めて重要なテーマである。

ただし、その品質を維持するために、企業はかなりのコストを負担することになる。

SCSKサービスウェア デジタルコミュニケーション部 新規サービス開発課長 寺内 道貴によれば「コールセンターに関する各種コストの中でも、人件費の比率は大きい。センターによっては運営コストの半分くらいを占めることもある」と言う。

企業の業態や扱う商品・サービスによって大きな幅があるが、仮に時給1,200円、月20万円のパートスタッフで10席のコールセンターを運営するとしてオペレーターの人件費だけで毎月200万円。
ここに様々な機材や通信費、それに管理者のコストを入れると年間では数千万単位の負担となる。

「問い合わせ内容が難しかったり、対応に専門知識が必要だったりする場合はさらに金額が上がります。昨今増えている多言語対応のようなサービスを付ける場合もコストは上振れします」(寺内)

最近は人材不足が続いているためオペレーターの採用コストもかさむ。
「有人対応の場合、問い合わせ時間中はオペレーターが1つの電話にかかりきりになります。そのため、なるべく利用者を待たせないように、センターはある程度の人数を確保しなくてはなりません。センターの運営コストとは別に、求人や採用にかかるコストも必要なのです」(寺内)

このような背景から、従来のオペレーター(人)による対応を、メールやFAQ、そしてAIといったITを活用した対応へと移行する流れが生まれているのだ。

SCSKサービスウェア デジタルコミュニケーション部 新規サービス開発課 課長 寺内 道貴

SCSKサービスウェア デジタルコミュニケーション部 新規サービス開発課長 寺内 道貴。同社はSCSKグループでコールセンターやテクニカルサポートなどBPOサービスを提供している。

問い合わせ対応もAI活用の時代

問い合わせ対応のIT化は、対応品質や顧客満足度を下げないことが前提だ。

「問い合わせの種類を、商品やサービスを買う前と買った後で分けると、買った後の方が、重要度が高くなります。すでにお金を支払った顧客にとって、問題解決は喫緊の課題だからです。不満な状態が長くなるほど、顧客満足度が低下し、リピート率も下がります。企業としては、いかに迅速に顧客の不満を解消するかが重要なのです」(寺内)

もう1つ考えなければならないのが、どのような人が問い合わせているのかだ。
「IT化がコストダウンをもたらすのは間違いありません。ただし並行して、問い合わせる顧客の属性を考えなければなりません。例えば、PCなどのテクニカルサポートは、50代以上からの問い合わせが半分を占めます。ITに馴染みの薄い世代が多いと、IT化してもセンターへの入電数は減りません。家電の故障の問い合わせも同様です。動かない、使えない時には、深刻度、緊急性が高いため、電話ですぐに解決したいのです」(寺内)

逆に、若年層からの問い合わせが多いと、IT化の効果は出やすくなる。
「若年層は電話の前にスマートフォンで調べます。そうした利用者が多いと、メールやFAQが有効に機能します。リーチ層とのやりとりを活性化できるからです。例えば、若年層との接点を増やしたい金融機関などは、LINEを使った問い合わせ対応に力を入れています」(寺内)

今後、当然ながら、ITに慣れた人の割合が増えていく。
コールセンターは、かつてお客様相談室と呼ばれた時代から長期にわたり、問い合わせ対応のサービスを提供してきた。そのなかで、人による対応の一部は、徐々にメールやFAQといったITを活用した対応へと切り替えられてきた。

そして現在、旧来からのITを活用した対応が、業務効率化と満足度向上を両立させるAIを活用した対応へと進化するタイミングを迎えているのだ。

AIは効率化と対応品質を両立できるか

では、ITを活用した問い合わせ対応のうち、メール、FAQ、そしてAIにはそれぞれ、どのような差異があるのだろう。

例えばFAQは、その名の通り「よくある質問」とその回答を一覧表示したものだ。ユーザーに周知すれば、簡単な問い合わせが減り、センターへの入電数減少が見込める。ひいてはオペレーターの負荷軽減やコスト削減も期待できるだろう。

ただし、FAQの質問は数が多いため、見つけづらい、見つからない事態がよく起こる。また「よくある質問」に該当しない人の不満は解消できない。

一方、メールでの対応は、細かな質問にも答えられる。電話対応のように問い合わせ1件につき1人のオペレーターが占有されることもない。業務効率も良くなるだろう。

問題は、問い合わせメールに対応するまでの時間(リードタイム)である。
メールは通常、電話のようにその場で回答しない。質問が次々と送られてくれば、対応待ちがどんどんと積み上がっていく。そしてオペレーターは、積み上がった質問に一定期間内に回答しなくてはならない。

つまり、気をつけないとオペレーターの残業が増える可能性が高いのだ。 人手だけに頼っている限り、本質的な効率化は難しいことになる。

「FAQやメールと比較して、AIを活用した問い合わせ対応は本質的な問題解決につながります。人手を介さないからです。特にリアルタイムで対応できるチャットボットは、両方のメリットを併せ持っています」(寺内)

チャットボットは、ユーザーが入力した問い合わせに、バーチャルのキャラクターが回答を出す。
質問に合致する回答を、データベースから自動的に選ぶ仕組みだ。

問い合わせには、質問の意図が読み取れないもの、内容が曖昧なものもある。
こうした問い合わせに対して、質問内容を聞き返すのがSCSKのチャットボットDesse(デッセ)の特長の1つだ。
「会員情報について教えてほしい」という問い合わせに対し「会員情報の何を知りたいですか?」と聞き返すことで、利用者が求める回答を絞り込んでいくわけだ。

逆に、質問が明確な場合、聞き返しは行われない。
「このスカートの在庫はありますか?」という質問には「何色ですか?」と聞き返すが、「この赤いスカートの在庫はありますか?」という質問であれば色は聞かない。

「開発当初のDesseは一問一答で、聞き返し機能がありませんでした。しかし本来、オペレーターとのやりとりは会話です。不明な点があれば聞き返すのが当たり前なのです。その機能をDesseに実装することで、ピンポイントの回答が出せるようになりました」と、SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第一事業本部 ソリューション第三部 第三課長 稲田 徹は語る。

SCSK 全社営業統括部門 戦略ソリューション営業統括本部 イノベーション統括部 第一課長 稲田 徹

SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第一事業本部
 ソリューション第三部 第三課長 稲田 徹

音声と文字という違いを除けば、Desse上のやりとりはオペレーター(人)によるやりとりとほぼ同じだ。しかも、センターの営業時間外も問い合わせ可能で、電話がつながるまで待つストレスもない。
オペレーター対応の不満さえも、解消しているとも言えるだろう。

聞き返しによる「会話」ができるようになったことで、チャットボットの回答精度が高まり、それが評価されて導入実績も格段に増えてきた、と稲田は言う。

今後、コストと品質を両立させる顧客対応の手段として、チャットボット導入を検討する企業が増えていくことは間違いなさそうだ。(後編に続く…)

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