なぜいま、クラウドERPに投資するべきなのか
「攻めのIT」でDXを推進するには、まずは「守りのIT」再構築から

「攻めのIT」でDXを推進するには、まずは「守りのIT」再構築から
労働力人口の減少、テレワークの常態化など、ビジネスを取り巻く環境変化はますます激しくなっている。ビジネスの根幹となる業務を管理する基幹システムにも、迅速性や柔軟性が求められている。そのような状況の中で、多くの企業が注目しているのがクラウドERPだ。国産初のERPとして誕生し28年が経過した「ProActive」もクラウドERPとして生まれ変わった。なぜいま、クラウドERPに投資するべきなのか。クラウド化の狙いとそのポイントを聞いた。

ビジネス環境の変化で重要性が増す基幹システム

ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しており、バックオフィス業務に大きな影響を与えている。その1つが労働力人口の減少である。日本の総人口は2008年を境に減少し、2020年の労働力人口は前年に比べ18万人の減少となった。

この傾向は今後も続くと考えられている。高齢化により多くの企業でベテラン層が退職し、「人事・労務や経理業務という専門スキルを持っている人材が非常に集めにくくなっています」とSCSK ソリューション事業グループ ProActive事業本部 ビジネス推進部長の五月女は語る。

もう1つの変化が、新型コロナウイルス感染拡大に伴いテレワークが常態化しつつあること。ペーパーレス化や脱ハンコ、ワークフローの活用などが、バックオフィス業務に影響を与えている。

政府も電子帳簿保存法の改正を早めるなど、それを後押ししているが、「限られたIT人材では、テレワークやリモートワーク環境の整備に忙殺され、なかなか基幹システムにまで手が回らない状況になっています」と五月女は言う。つまり基幹システムをいかに運用の手間をかけずに、ビジネス環境の変化に対応できるようにするかが、ビジネスの成長・発展にとって重要になるわけだ。

一方で、DXの取り組みを強化する企業も増えている。

「IT化は定量的な話ですが、DXはそこから質的に変化を求めていくもの」と五月女は話す。そしてこのDXを推進する上でも重要になるのが「守りのIT(SoR領域)」、つまりERPなど基幹システムによる地固めだ。

なぜ、ERPがDXを推進する鍵となるのか。「攻めのIT(SoE領域)」でDXを進めても、基幹システムの情報を活用できなければ成果を出すのが難しいからだ。

急がれるレガシーシステムからの脱却。そこで注目されているのが、クラウドERPの活用である。

SCSK株式会社 ソリューション事業グループ ProActive事業本部
ビジネス推進部 部長 五月女 雅一

なぜいま、クラウドERPなのか

クラウドERPが注目されているのには理由がある。一般的によく言われることだが、クラウドの最大のメリットは、システムのライフサイクルにかかる運用工数が大きく削減されることだ。

「IT人材が不足する一方で、ITに関わる業務は増えています。クラウドを活用すれば、ハードウェアの保守から解放され、バックアップはシステムに、法改正対応などのバージョンアップはベンダーに任せられるのです。守りのITに関する負荷を大幅に削減することで、攻めのITに注力できるようになります」(五月女)。

第2のメリットは、バックオフィスの業務環境がオンライン化されること。たとえば出張精算であれば、出張者はオフィスに戻って出力した伝票を上司や経理に回していた。だがクラウドERPを導入すれば、出張先や自宅で伝票を登録。上司や経理担当はそのデータで処理を進められる。

「どこからでも出張精算ができる上、処理にかかる時間も大幅にスピードアップできます。経理担当も、データ検索しやすく、紙伝票の保管が不要なので、業務負荷が下がります。これだけでも大きなメリットです」(五月女)

第3に外部システムやサービスとの連携が容易になることだ。クラウドERPに限らず、すべてのクラウドサービスは「外部からのアクセスを最初から考慮した設計となっている」(五月女)ため、APIなどによるシステム連携も容易だ。

オンプレミスの場合、社内で使うことを前提に作られているものが多いので、拠点間の接続に専用線を用いるなど、セキュリティ対策が必要になる。クラウドに切り替えれば、情報システム部門の負荷も下がるだろう。

第4にクラウドERPであれば、法改正への対応がタイムリーに行えるようになる。オンプレミスの場合は、法令が改正されるたびに、個社ごとにシステムを更新する必要があるが、クラウドであれば、システムはベンダーが更新するので、常に最新のサービスが利用できる。

「オンプレミスだと個社ごとの環境に応じて、システムの更新やテストの方法が変わるケースがあります。リスクは当然高くなり、タイムリーに適用できない可能性もあるのです」(五月女)

ERPパッケージのクラウド比率の推移
(出典:矢野経済研究所「ERP市場の実態と展望2021」)

矢野経済研究所が2021年に実施したERP市場動向に関する調査によると、2019年のクラウド利用率が4割弱だったのに対し、2022年には7割程度になると予測されている。

「実際、2020年の時点ではオンプレミスERPとクラウドERPの問い合わせが半々でしたが、2021年になって、6~7割はクラウドERPでお話をいただいており、クラウドの利点が浸透してきたと感じています」(五月女)

環境変化に強く、永く使える「超寿命クラウドERP」

SCSKでは、こうした企業ニーズを満たすべく、超寿命クラウドERP「ProActive C4(プロアクティブ シーフォー)」の提供を開始した。国産初のERPとして最初のバージョンが出てから28年が経過したProActiveシリーズは、すでに6200社、280の企業グループに導入されており、「会計」「人事・給与」「販売管理」「経費・勤怠管理」という基幹業務全般をカバーしている。

ProActive C4のコンセプトは「Customer(寄り添う)」「Collaboration(共創する)」「Connectivity (つながる)」「Cross-border(広がる)」という4つのC。

第1のC「Customer」では、お客さまに寄り添い、長く快適に使ってもらうために、UI/UXを徹底的に追求。役割や立場によってユーザーごとに表示する項目やレイアウトを変更できる「画面パーソナライズ機能」を提供するなど、ユーザーがストレスなく快適に操作できるようになっている。また、「スマート導入」「スマート保守」といったユーザー視点のサービスも提供している。(関連記事:ユーザー体験を徹底追及した、次世代の超寿命クラウドERPとは

導入作業のナビゲーションや業種に応じたマスターテンプレート(標準業務モデル)を提供することで、お客さま自身が作業負荷を軽減しながら、効率よく導入作業を進められる「スマート導入」。そして、安心して使い続けられるよう、オンデマンドでユーザーの疑問や課題に迅速に対応する「スマート保守」。これらのサービスは、お客さまの体験価値を重視したことで生まれたものだ。

「問い合わせの機能強化やPUSH型の情報提供など、サービスメニューの拡充を図り、お客さまに寄り添うことで、ProActive C4を長く使ってもらえるように進化していきます」(五月女)

ProActive C4のコンセプト

第2のC「Collaboration」とは、お客さまのビジネス価値向上のための共創。例えば、従来からの人事給与に加えて、経理・財務領域にもBPOサービスを拡充していくという。人事労務や経理のスペシャリストにより、バックオフィス業務を導入から運用までワンストップで提供されるため、業務負荷を大幅に軽減できるようになる。

第3のC「Connectivity」では、ERPではカバーできない機能について、他システムや他社のクラウドサービスとの容易な連携を実現する。そして第4のC「Cross-border」は、グローバルなビジネス展開に対応できるよう、多言語対応や基軸通貨対応を実施していく。

クラウドERPを中核としたエコシステムへ

クラウド化で心配されるセキュリティ対策も万全だ。ProActive C4はシングルテナントでサービスを提供。これだけでもマルチテナントのサービスに比べて、セキュリティの強度が高まるが、さらにProActive C4の基盤には「S-Cred+(エスクレドプラス)プラットフォーム」という、AWSに付加価値をプラスしたSCSKの複合基盤サービスを採用している。

「S-Cred+プラットフォームでは、トレンドマイクロとAWSのサービスを組み合わせて、セキュリティインシデントの初期対応を自動化したり、セキュリティ上致命的な変更を検知した場合、監視機能によって自動修復したりするなど、非常に堅牢なシステムとなっています」(五月女)

SCSKでは現在、S-Cred+プラットフォーム上で様々なサービスの開発、提供を加速させている。なかでもProActive C4は中核のアプリケーションという位置づけになる。

例えば、ProActive C4は生産管理の機能を持っていない。しかし、生産管理の業務ノウハウをテンプレート化した次世代生産管理システム「atWill(アットウィル)」が、同じS-Cred+プラットフォーム上で稼働しているので、容易にProActive C4と連携できる。

同様に、atWillを使っている企業が、ProActive C4で会計モジュールのみ使用するといったことも、APIにより容易に実現できるようになる。「作らない開発」によって、エコシステムが実現するわけだ。

連携サービスの拡充
(対象サービスは変更となる可能性があります)

さらに、他社のクラウドサービスやBPOサービスとの連携も拡充させていく。すでに、タレントマネジメントシステム「HRBrain」とのデータ連携や、パソナHRソリューションとの共創による「人事給与BPOサービス」が提供されており、今後は「連携サービスを拡充することで、お客さまへの価値提供に貢献していきたい」と五月女は意気込みを語る。

企業の情報システムには、これまで以上にビジネス環境の変化に対応する迅速性と柔軟性が求められている。今後ますます人手不足が深刻化するIT人材を「守りのIT」に充てていては、ビジネス成長につながる「攻めのIT」への投資が遅れてしまう。

貴重なIT人材を成長分野に活用するためにも、「守りのIT」領域の再構築が求められている。環境変化に強く、永く使える「クラウドERP」への投資はその第一歩。検討が急がれる。