Google Cloud Platformで2025年の崖に挑む(後編)
現在、多くの企業では「2025年の崖」を克服すべく、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むことが求められている。クラウドサービスの利用が当たり前になりつつある今、先進的な企業では自社のビジネスの特性や環境を考慮し、複数のクラウドサービスを使い分けるマルチクラウド利用も増えている。今回、SCSKではAWSとAzureに続いて、Google Cloud Platform(GCP)のソリューション提供を開始する。GCPソリューションをラインアップに加えたことで、「2025年の崖」解決に向けて何が提供できると考えたのか。サービス提供のキーパーソンに話を聞いた。
ポイント
  • 温度差があるDXへの取り組み
  • SoR領域でDX化が進まない理由
  • DXを推進する上での重要なポイント
    (前編)
  • SoR領域へのクラウド導入のリスク
  • Google Cloud Platformを活用するメリット
  • 他のサービスとの連携でDXを推進
    (後編:本記事)

SoR領域へのクラウド導入におけるリスク

──DXを推進する上で重要なポイントをお聞きしましたが(前編参照)、SoR領域へのクラウド導入のリスクはないのでしょうか。

岸岡 リスクは特にありません。ですが注意すべきポイントがあります。第一にクラウドかオンプレミスかを比較検討する際、費用対効果は次の更改を含めて考えることです。オンプレミスの場合、6年目にはハードを買い換える必要があります。ですが、5年スパンで比較検討するとその費用が入っていないため、費用対効果が正しく測れないのです。

白川 第二に会計監査のデータ保護の問題です。オンプレミスのツールを前提にすると、クラウドサービスは監査に引っかかってしまう可能性があります。監査基準をツールではなく実施内容と効果で定義してから、比較検討することをお勧めします。

岸岡 そして第三がオンプレミス時代のサイジングの考え方を捨てることです。オンプレミスのサイジングの考え方でクラウドを見積もってしまうと、適正な比較はできません。

──ハイブリッドクラウド、マルチクラウドが当たり前になりつつあるのは、ベンダーロックインのリスクを防ぐためでしょうか。

岸岡 ベンダーロックインされることで、顧客ビジネス戦略の幅を狭めてしまう可能性があるのは確かです。それを防ぐために、マルチなプラットフォームを使い分けることが必要です。ですがそもそも、各クラウドサービスは、その出自や本業によって強みが異なります。GCPを担ぐGoogleは検索サービスの会社なので、テキストサーチ、すなわち文字を扱うところを得意としています。

AWSを運営するアマゾンは、Amazonフレッシュなどの流通事業でAIによる検品を行っており、モノが正常かを自動的に画像認識の上、判断するサービスが強い。Azureを運営するマイクロソフトはやはりOfficeに強みがある。Officeを使って何かをしたいときはAzureがお勧めです。一見同じように見えるクラウドサービスですが、その特長を見極めて使い分けていくことがDXを進める上でも重要になります。マルチクラウドが当たり前になっている背景には、それぞれの強みの良いとこ取りができることが大きく影響していると思います。

(左)SCSK ITマネジメント事業部門 基盤サービス事業本部
サービス開発推進部長 白川 正人
(右)同 サービス開発課 課長代理 岸岡 学

SCSKがGCP上でサービスを提供する理由

──SCCKがGCPのソリューションサービスの提供を開始した理由もそこにあるのでしょうか。GCPを活用するメリットについて教えてください。

岸岡 AWSはすでにさまざまなワークロードに対応できる基盤になっており、適用できないワークロードは想像できません。ですが、GCPにはAI/機械学習、データ統合/分析、マルチクラウドコンテナという3つの尖った領域がある。この分野はGCPを使う方がお勧めです。しかもGCPはAnthosというマルチクラウドでのデータ統合および利活用を目的としたコンテナサービスを提供しています。このサービスを使うと、現在、他のクラウドにデータを蓄積しているお客様もGCPにデータを移行したりすることなく、BigQueryによる分析が可能になります。

Googleは元々が検索サービスなので、AIを活用するための膨大なデータを持っている。またAutoMLという、ある程度学習済みの自動マシンラーニングのライブラリも持っています。

──既存システム資産の活用で重要になるのは何でしょうか。またクラウドとDBの連携ではどのようなノウハウが求められるのでしょう。

白川 システムの中心にあるのはDB(データベース)です。ですがDBはオンプレミスとクラウドで最もアーキテクチャが異なり、かつシステムの中でも高い非機能要件が求められる領域です。クラウド移行に際しては、何をどこまで変えることを許容できるか、しっかりとアセスメントすることが重要になります。特に当社はDBのアセスメントを得意としています。商用DBをクラウドに移行するときは、ライセンス問題が発生するケースが多く、注意が必要です。当社はMySQLを古くから取り扱っており、そのノウハウに強みを持っています。

──Googleによるメインフレームマイグレーションの取り組みをどのように評価していますか。

白川 机上評価の段階ですが、Googleのソリューションは従来製品よりもソースコードおよびデータの依存関係が分析できる幅が広く、リライトの自由度も高いと思います。データの移行も可能です。PoCなどで試してみて、使えることがわかれば提案したいと思っています。

SCSKのGoogle Cloud Platform関連ソリューション

良いところ取りしながら、サービスを拡張

──SCSKではUSiZEシェアードというサービスを提供していますね。

白川 USiZEシェアードには「パブリッククラウド(AWS/Azure)」とVMwareベースの自社センター内クラウドである「シェアードモデル」があり、いずれも運用サービス付きで提供しています。シェアードモデルはすでに実績もあります。SoR基盤を面倒なアーキテクチャ変更や教育をすることなしに延命させたいのなら、シェアードモデルへの移行がお勧めです。

──「もの革」との連携によって、どのような価値が提供できると考えていますか。

白川 「もの革」とは、SCSKが推進する「ものづくり(ソフトウェアエンジニアリング)革新」の略です。お客さまの中にはブラックボックス化したレガシーシステムがまだまだ残っています。ですが「2025年の崖」を乗り越えるには、それを早期に刷新し、効率的で属人化しないシステム運用の実現が求められます。今こそ「もの革」、つまりシステム開発・運用における徹底した自動化・標準化を進める時期なのです。

この「もの革」を進めるにあたり、当社ではインフラ基盤、アプリケーション基盤などを「S-Cred+プラットフォーム(エスクレド プラス プラットフォーム)」として統一し、全社開発案件への適用を開始しました。このプラットフォームは5つの基盤で構成されており、基盤を選択することで環境の自動構築が可能になるため、プロジェクト期間の大幅短縮と運営コストの削減を実現できます。

──今後、Googleとの連携をどのように強化しようと考えていますか。

白川 GCPは、AWSやAzure、シェアードモデルと組み合わせて提案していくことを考えています。シェアードモデルに関しては、当社データセンターを経由した低レイテンシーのコネクティビティサービスの提供を準備しており、データセンターのお客様がDXを推進する上での助けになればと考えています。

いずれにしてもAWSをベースに、USiZEシェアードやGCPなどを良いところ取りしながら、サービスを拡張していく予定です。まずはデータセンターのオンプレミス環境やVMware環境から出て、DXを推進しようとするお客様にGCPを活用して価値を提供する。もちろん純粋なDX案件への活用も検討していきます。

岸岡 2025年の崖に向け、これからはITベンダーではなくユーザー企業がIT活用の主役になっていくと考えています。そのためにITベンダーはどれだけ柔軟にユーザー企業を手助けできるのかがポイントになる。SCSKのGCPサービスはそうしたニーズに応えていくべく、サービスとして拡充を図っていきたいですね。

白川 これからDXを進める企業においては、まずSoEからDXに取り組んでいただき、SoRへと広げていく。そのお手伝いができれば幸いです。