データセンターにも、地球環境保護の視点が求められる時代
AIによる空調管理で、環境にやさしく安定した稼働を実現
AIによる空調管理で、環境にやさしく安定した稼働を実現
環境問題が深刻となる今、各企業には省エネへの取り組みが強く求められている。特に、取り扱うデータ量の増加と機器の高性能化に伴い、データセンターの消費電力量は右肩上がりだ。その対策の焦点が「空調」である。IT機器の熱暴走を防ぐには冷却が不可欠だが、空調を稼働させるには膨大な電力が必要になる。「IT機器の安定稼働」と「省エネによる地球環境対策」という相反する課題を両立させるための実証実験、データセンターにおけるAI活用の取り組みを見てみよう。

地球環境問題への対応と、データセンターの課題

一昔前、多くの企業は社内にサーバーを置いて管理していたが、現在ではデータセンターを利用するケースが増えている。自前で人員・設備を整えるより、専門のデータセンターを利用する方が、運用・保守の手間がかからず、安全性も高いからである。また、クラウドサービスを導入したり、AI・IoT・ビッグデータなどを活用したりする企業も増加中。データセンターの市場規模は拡大し続けている。

サーバーやストレージなどの性能が向上したことで、IT機器が使う電力は増加傾向。現在の1ラックあたりの消費電力量は、10~15年前に比べ3~10倍程度になったと言われている。

「当社のデータセンター全体で消費される電力量のうち、約6割を占めているのがIT機器。残りの4割が、空調や照明といったファシリティです。ただし、私たちにはIT機器の消費電力を抑えることはできません。電力量を抑えるにはファシリティ分野の省電力化が必須なのです」(SCSK ITマネジメント事業部門 netXデータセンター事業本部 センター基盤部 副部長 森田 隆夫)

ファシリティが消費する電力のうち、約9割が空調に費やされている。IT機器は熱に弱く、安定稼働させるには一定以下の温度にとどめることが不可欠。機器の利用が高まり、発熱量が増えた結果、空調にかかる電力量も右肩上がりになっているのだ。SCSKが運営するデータセンターでは、空調にフォーカスして電力削減を目指した。

「以前から、空調機器を高性能・省エネなものに取り替える、外気を取り入れて機器の冷却に活かすなどの工夫により消費電力量を下げようと取り組んできました。しかし、こうした『物理的な削減手段』はすでにやり尽くした状態でした。」(森田 隆夫)

左から、SCSK 近藤 彩也子、森田 隆夫、森田 毅

AI技術を活用した温度予測

そこで新たに取り組んだのが、AIを活用した空調制御だった。

一般的なデータセンターでは、サーバーなどが熱暴走を起こさないよう、空調の能力をフルに使ってIT機器を冷却している。だが、熱暴走を避けるには温度を一定程度に保てればよく、必要以上に冷やすのはエネルギーの無駄遣いだ。そこでSCSKのデータセンターでは、サーバールームの気温を頻繁にチェックし、空調機器を調整することで「冷やしすぎ」を防いでいる。

「でも、こうしたやり方には問題がありました。1つは、空調の制御をオペレーターの経験則に頼ってしまう点。経験の浅いオペレーターの場合、ベテランに比べてムダやムラが大きくなる傾向がありました」(SCSK 全社営業統括部門 戦略ソリューション営業統括本部 イノベーション統括部 第二課 森田 毅)

サーバーは、常に一定の熱を出すわけではない。多くのアクセスが集中したときに、その分、多くの熱が発生する。もしAIを使ってサーバーの温度を予測できれば、先回りして空調を調整し、より効率的な冷却が可能になるわけだ。

もう1つの問題点は、サーバールームの温度を細かく管理できないこと。室温は、排気口と吸気口にある温度センサーのみで確認する。そのため、熱くなっているラックとそうでないラックを判別できなかったのだという。

「各ラックの発熱量は、稼働状況に応じてまちまちです。また、サーバールームには空気の流れなどの関係で、周りに比べて熱くなる箇所「熱だまり」が生じます。温度センサーをたくさん設置してサーバールーム内の温度を綿密に確認し、そこにSCSKが培ってきたAIのノウハウを活用すれば、熱くなったエリアだけを集中的に冷やすことが可能になる。SCSKには、画像認識やセンサーデータ解析など、多くのベースモデルを持つAIモデル構築サービス『SNN(SCSK Neural Network toolkit)』があります。これを活用すれば、サーバールーム全体を一括で冷却するよりも、冷房効率が飛躍的に高まるのではないかと考えました」(森田 毅)

AIの時系列予測による、きめ細やかな空調制御

AIによる冷却システムの実証実験で最初に手をつけたのは、ラックごとに細かく温度センサーを設置すること。これにより、どのエリアがどのくらいの熱を帯びているのかが把握できるようになる。

「サーバールーム全体の気温だけを計っていると、一部のラックだけが熱くなっていてもなかなか気づけません。そのため、時間が経過し室温全体が上がってから、空調を全力稼働していたのです。ところが、ラックごとの温度が可視化されれば、各ラックの温度上昇にいち早く対応でき、IT機器の安定稼働が可能になる。しかも、熱だまりが発生したら、そこに近い空調機だけを全力稼働すればいい。サーバールーム全体を冷却するのと比較して、空調効率は高まるはずです」(SCSK ITマネジメント事業部門 netXデータセンター事業本部 センター基盤部 ファシリティ構築課 近藤 彩也子)

続いて取り組んだのが、AIを使った「時系列予測」である。これは、数多くの温度センサーから集めたデータを分析し、どのラックがいつ、どのように温度変化するのか先読みする仕組み。温度変化に先がけて空調機器による冷却を調整できるため、過剰冷却や冷却不足が減って冷房効率の改善や機器の安定性向上が期待できる。

「AIによる時系列予測の精度を確認するため、5分後の温度変化の予測値と実際の温度との比較を繰り返しました。現在のところ、予測精度は95%程度。これから多くのデータが集まり、AIの調整が進めば、予測精度はさらに高まるはずです」(森田 毅)

この実証実験は、3つのフェーズに分けられる。多くの温度センサーを設置し、AIによる温度予測の正確性をある程度検証し終えた現在は第1フェーズ。この後は、AIが温度変化に応じて最適な冷却方法とその消費電力を予測する第2フェーズ。そして、空調の運転をAIにすべて任せる第3フェーズへと進む予定だ。プロジェクトチームは最終的に、空調費の3割削減を目指している。

AIによる冷却システムの実証実験風景

環境問題への貢献と安定稼働との両立

AI導入による最大のメリットは、サーバーの安定稼働と地球環境問題への貢献を両立できる点だ。

「昨今の企業には、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)など、環境への貢献が求められています。当然、社内サーバーやその冷却装置については、各社で省エネ化を進める必要があるでしょう。一方で、企業システムのダウンは絶対に許されない。この2つを両立させるのは、かなりハードルが高いのではないでしょうか。その点、私たちは専門家です。自社で蓄積したノウハウと、AIなどの最新テクノロジーを組み合わせることで、お客さまに対して『安定稼働×省エネ』を両立した環境を提供できます」(森田 隆夫)

また、ユーザー企業に対しては『コスト削減』というメリットももたらせるという。

「AIを活用して電気代を削減できれば、お客さまの利用コストも下げられるはずです。いずれデータセンターの空調制御が実用化できた段階では、そのノウハウをサービス化し、大規模オフィスや工場のように大量の電力を消費する場でも活用できるかもしれません」(森田 毅)

各企業に環境対策が求められている中、自社サーバーを省エネ対応のデータセンターに移すことは、新たな環境対策と言えるだろう。

「SCSKはデータセンター運用のプロフェッショナルとして、消費電力量の削減と安定稼働の実現に全力で取り組んでいます。今後もこの勢いを緩めず、お客さま企業の持続的な価値向上に貢献したいですね」(森田 隆夫)

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