イベントレポート:第2回 AI・人工知能EXPO

2018年4月4日から6日にかけて、東京ビッグサイトにて「第2回 AI・人工知能EXPO」が開催された。AI・人工知能専門の展示会として日本最大規模を誇るイベントだ。企業にとって忙しい新年度の時期であるにもかかわらず、3日間の来場者数は前年を上回る4万6,300人あまりを記録。インターネット黎明期のような盛り上がりを見せるなか、出展企業のブースには大勢の来場者が訪れ、ミニセミナーやデモンストレーションに高い関心を示していた。

AI 市場の現状と課題解決のステップ

自社の事業やビジネスに、AI(人工知能)を活用したい企業は増えている。

第1回の「AI・人工知能 EXPO」では、「AIとは何だろう」「どのように使えるのだろう」といったことに興味を持つ来場者が多かったが、今年行われた第2回では、導入を前提として商品やサービスを見に来ている来場者が目立った。

ある調査によれば、国内のAI市場は今後6年間で15倍以上に成長する見込み。SCSKブースの来場者アンケートでも、2割弱の方が「導入を検討している」と回答している。いままさに、AIの本格導入が始まろうとしているのだ。

ユーザー企業のこうした姿勢の背景には、AIを導入することで、彼らがこれまでのITに抱えていた不満を解消できるかもしれない、という期待がある。彼らの不満とは、既存のIT資産が足かせとなってビジネスの変革スピードが遅くなること、新しいビジネスのために新システムを導入すると開発コストがかさむことなどだ。

しかし、こうした不満は、AIとクラウドを組み合わせることで、解消できる時代になってきた。

では、AI導入にあたり、ユーザー企業には何が求められるだろう。通常、AI導入プロジェクトは、ゴール設定から始まる。すなわち、「AIを使って何をしたいか」「どんな課題を解決したいか」を明確にするのだ。この際、「工場の検品チェックにAIを活用したい」「店舗における客の導線を分析したい」など、なるべく具体的に、できれば数値目標なども設定できるとよい。

一方、AI導入を支援するSCSKは、ゴールや目標を確認した上で、まずは顧客の持つデータを確認し、必要に応じて新たにデータを収集するなど、学習用の実データを整備する。そして、統計技術などにより実データを分析してその特徴点を明らかにし、事象間の因果関係を推定することで、モデルを構築するのだ。

こうして構築されたモデルは、導入後も稼働しながら、データを学習し、進化する。つまり、ユーザー企業において、システムが自ら進化するのだ。

従来のITシステムは、稼働開始と同時に陳腐化も始まっていた。導入後、数年が経過したシステムは、もはや企業の業務プロセスや事業内容と合致しないようになっていたのだ。逆に実態に合わせようと無理にアップデートを繰り返すと、つぎはぎだらけのシステムとなり、保守・運用コストが増える。

しかし今後は、AIとクラウドを活用することで、システムを稼働させながら成長させることが可能になるのだ。

2回目の開催を迎えたAI・人工知能 EXPO。来場者は4万6,300人以上にものぼり、実際にAI導入を検討している企業も多く見受けられた。

AIの機能をフル活用するSCSKのソリューション群

AIという言葉で表される範囲やAIの活用範囲は広いが、中でも特に注目度が高いのが「言語処理」と「画像認識」の分野である。SCSKでも、ニーズの高まりから、この2つの分野におけるソリューションに力を入れている。

特に、言語処理の分野で歴史と実績を持つことがSCSKの強みの1つだ。そのなかで培ってきたノウハウを踏まえ、また「お客様の声=顧客接点の最前線」という視点に立ち、今回のEXPOでは8つのソリューションを出展し、出展ブースでは、ソリューションの詳細説明やデモンストレーションとともに、ミニセミナーを実施した。

ここでは、その中から、音声認識の「AmiVoice」と「VOiC Finder」、人工知能を活用する「Desse」と「VOiC AI Search Helper」、PoC(Proof of Concept:適合性検証)を検討中の企業が、先進のディープラーニングモデルを無償で利用できる「SNN」(SCSK Neural Network toolkit)を取り上げてみたい。

▽オペレーターの業務をAIが支援(AmiVoice/VOiC Finder)

AmiVoiceは、コールセンターなどにおける電話のやりとりを自動でテキスト化するシステムだ。わかりやすく言えば「通話の見える化」であり、精度の高さが特長である。

「AmiVoiceによる、オペレーターが発する言葉の認識率は85〜90%にも及びます。通話では、お客様の話し方に癖があったり、言葉を聞き取りづらい環境で会話したりするケースもあります。それでも、平均80%という認識でテキスト化できるのです」(全社営業統括部門 戦略ソリューション営業統括本部 ソリューション営業統括部 第一課 増田 建二)。

導入メリットとして大きいのは、会話内容を入力するオペレーターの手間と時間を圧縮できることだ。通常、コールセンターでは、通話を終えたオペレーターが会話の内容をPCなどに入力している。その作業を大幅に軽減できるのだ。例えば、AmiVoiceを導入している住宅設備メーカーの場合、オペレーターの後処理の時間を8分04秒から3分40秒に減らすことができた。また、テキストの分析データをコールセンターや設計部門と共有すれば、オペレーター業務の応対品質向上や、製品の改善、商品力のアップなどにも役立てることができる。

自動テキスト化の用途は広い。ただし、その機能を有効活用するには、テキスト化だけでなく、テキストの分析が必要となる。その役目を果たすのがVOiC Finderだ。VOiC Finderの特長は、既存のテキストマイニングの技術と比較してみるとわかりやすいだろう。従来のテキストマイニングは、記事、アンケート、SNSを分析し、頻出する言葉を調べるものだ。結果、どのような言葉が多かったかは一覧できるが、各単語がどのような意味や目的で使われていたかはわからない。

一方、VOiC Finderは会話の中で出てくる話し言葉を分析する。例えば、オペレーターとの会話から「チラシを見た」「住宅ローン」「借り換え」といった言葉を抽出し、お客様が何を知りたがっているか、何に不満を感じているかなどを分析する。「話題」の視点で分析することにより、重要なVOC(Voice of Customer:顧客の声)を確実に残せるのだ。

「SCSKは、機械翻訳の初期のブームのときに音声認識の研究をはじめました。音声認識ソリューション分野への取り組みも10年以上にわたります。そのため、話し言葉や会話の分析に強いのです」(増田)

音声認識AmiVoice/音声認識テキスト超高速解析VOiC Finderのミニセミナーの様子。

▽機械翻訳の研究をコールセンター向けソリューションに活用(Desse/VOiC AI Search Helper)

Desseは、お客様からの問い合わせに自動で回答するチャットボットで、バーチャルコンシェルジュがお客様とテキストで会話し、質問に答える。チャットボットは、お客様の質問内容(テキスト)に応じて、蓄積している回答データベースから回答を選出する。質問に直接答えることもできるし、必要な情報が記載されているFAQやサイトを案内することもできる。

Desseを導入することで、時間帯を問わず、即座に問い合わせ対応ができるようになる。これまでオペレーター(人)の力に頼っていた部分を機械化・自動化できるので、コールセンター業務の効率化やコストダウン効果につながる。

「ここ数年、カスタマーサポートサイトなどにチャットボットを導入する企業が増えていますが、導入実績でもDesseは先行しています。製品化からすでに5年経っているからです。導入先企業のあるサポートセンターは、オペレーター対応コストの削減を目的として2013年に導入し、すぐに入電数が6割減りました」(SCSKサービスウェア株式会社 デジタルコミュニケーション部 新規サービス開発課長 寺内 道貴)。

先行して取り組んできたこともあり、事業展開する各国の言語にも対応済み。素早く多言語化できた背景には、SCSKの音声認識ソリューションが機械翻訳の研究からスタートした経緯がある。

回答候補を自動で選ぶ機能を、オペレーターが受ける電話(音声)と連動させるソリューションに、VOiC AI Search Helperがある。その基本的な仕組みはDesseと似ている。会話の中から話題を抽出し、知識データベースを参照。回答候補をオペレーターのPCに表示する。回答候補はAIが自動的に選出するため、オペレーターがマニュアルなどを自分で探す必要がない。

「オペレーター業務とAIを連動させることにより回答時間を短縮できます。また、会話の流れから回答候補を機械が選出するので、経験が少ないオペレーターでも対応でき、適切な回答を出せる可能性が高くなります」(増田)。

多言語チャットボットDesseブースの様子。

▽お客様専用AIモデルを構築できるサービス(SNN/SCSK Neural Network toolkit)

SNNでは、深層学習技術を用いた画像認識やセンサーデータのベースモデルを複数準備しているため、お客様のデータやノウハウを追加学習することで、お客様独自のAIモデルを迅速に構築できる。また、お客様とのPoCや共同研究の段階では、ベースモデルとAIモデル構築支援ツールを無償で提供している。

新たなITシステムの構築はPoCを踏まえて本格導入していくのが定石。AI導入についても同様で、どのようなAIの機能が、どのような課題を、どのように解決できるかを実証しながら進めていくことが重要である。その際に、SNNが重宝する。

「AI導入は、すでに多くの企業が具体的に検討しています。ただ、企業によって課題は異なり、どのようなAIの機能が役に立つのかわかりません。そうしたときに活用いただけるのがSNNです。各企業が独自のAIモデルを構築・実装する最初のステップを支援するのです」(全社営業統括部門 戦略ソリューション営業統括本部 ソリューション営業統括部 第二課 牧 和城)。

SNNが提供しているベースモデルは7種類、機能は5つに分けられる。具体的には、人物・物体検出および分類機能(検出モデル、分類モデル、分割モデル)、人物追跡機能(類似推定モデル)、異常検出機能(目視検査モデル)、距離推定機能(深度推定モデル)、異常検知機能(異常検知モデル)である。機能の範囲が広く、AI活用の主要な分野を押さえているのがSNNの特長。課題解決のためにこれから構築したいAIシステムを見据え、必要なモデルをセミオーダーで組み合わせることができる。

例えば、店舗の動線解析にAIを活用したい場合は、検出モデル、分類モデル、類似推定モデルを組み合わせたシステムが適しているかもしれない。出荷・品質検査であれば、分割モデル、目視検査モデル、深度推定モデル、異常検知モデルなどの機能が役立つだろう。

「AI導入では解決したい課題の設定が重要。どのような課題を、どのように解決したいかによって適した機能が異なります。SNNは、AI導入の効果をすぐに試すことができます。すでにPoCをスタートしている企業の中には、課題解決にとどまらず、新たな商品やサービスを生み出したり、既存のサービスの付加価値を高めたりするための検証を行っているケースもあります」(牧)。

AIモデル構築ツールキット「SNN」の距離推定機能を紹介するデモンストレーション。

AI導入を企業の価値向上につなげたい

ここで取り上げたほかにも、SCSKグループでは、画像や映像を自動的に着色する色彩AI(株式会社Ridge-i)や、AIエンジンにIBM Watsonを採用する企業に向けて、問い合わせ対応に必要な知識などの学習を支援するサービス「manaBrain」(株式会社JIEC)なども提供している。イベントではこれらについても、ブース展示し、来場者の高い関心を集めた。

今回の「AI・人工知能 EXPO」で8通りのソリューションを提案したことからもわかるとおり、SCSKの提供するサービスは幅が広い。また、各ソリューションには実績があり、開発力や技術力で先行している。

従来のITシステムは、人員・コストの削減や業務の改善を目的として構築されることが多かった。つまり、省力化と効率化がシステム構築の主たる目的である。もちろんそれも大事だが、SCSKはさらに一歩先を見据える。例えば、お客様の声を的確に拾えれば、商品・サービスの品質を向上させることができる。また、単純作業を減らせれば、人が付加価値の高い業務に専念できる体制を作ることもできる。

あるコールセンターでは、スーパーバイザーがオペレーター個々の対応力を評価することに相当の時間を費やしていた。しかし、VOiC Finderを導入したことで、評価に使っていた時間を指導に使えるようになった。これは、IT化が業務改善だけにとどまらず、新たな価値を生み出した一例と言えるだろう。お客様応対の優れたオペレーターを自動測定し、対応力を高めたことなどにより、コールセンターの満足度調査でトップになった企業もある。省力化と効率化の先には、IT化による企業価値の向上という効果もある。

このような効果を生み出すには、AI導入は大きなチャンスになる。課題解決のためにも、新たな価値を創り出していくためにも、ぜひSCSKが持つノウハウと技術を活用してほしい。

[フォトレポート]当日の様子をご紹介します。

文責:SCSK FRONTGATE運営事務局

展示ブースでご紹介した展示内容は以下の通りです。

◆言語処理◆
DesseVOiC AI Search Helper
多言語チャットボット/AI回答支援

AmiVoiceVOiC Finder
国内実績No.1音声認識/音声認識テキスト超高速解析

AI問い合わせ対応「manaBrain」 
IBM Watson(R)を最初から賢く、どんどん賢くできるAI問い合わせ対応サービス

Kibit Knowledge Probe
AIによるテキストデータ分析支援システム

◆画像認識◆
SNN(SCSK Neural Network toolkit)
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