オリックス生命が成功したコールセンターシステムの大規模改修(前編)
業務改革と新技術の導入で、オペレーターの後処理時間を4割削減

業務改革と新技術の導入で、オペレーターの後処理時間を4割削減
業績が急拡大した組織では、継ぎ接ぎのシステムを抱えていることが多い。オリックス生命においても同様で、同社のコールセンターではオペレーターが10種類にも及ぶ業務システムを駆使して業務にあたっていた。そこでシステムの大規模改修に踏み切ったオリックス生命は、業務改革と新技術(シングルページアプリケーション、マイクロサービス、コンテナ)の導入で、いかにオペレーターの応対品質の向上と後処理時間の削減を実現したのか見ていこう。

業績拡大に伴う段階的システム開発で、オペレーター業務が煩雑に

「シンプルでわかりやすい」商品やサービスを提供することで、着実に成長し続けているオリックス生命。保有契約件数もここ15年ほどで10倍以上拡大しており、個人のお客さまや代理店からの問い合わせ件数も増加。それに伴いコールセンターの拡張もしていったという。

「今は個人のお客さまからの問い合わせも、代理店からの問い合わせもコールセンターで応対していますが、元々は異なる組織で応対していました。それを統合したのが10年前です。以降、コールセンターの業務改革に取り組んできました」(オリックス生命保険株式会社 オペレーションデザイン部 マネジャー 大﨑 英司 氏)

コールセンターのビジョンの作成から始まり、新人オペレーター採用や研修体制の構築など、お客さまに対する品質を担保するための体制を整えたという。しかし、新商品が発売されるたびに、コール数は増えていき、オペレーターを増やすことで対応していった。10年前に統合した当初は50人だったが、「年に約1.3倍ずつコール数は増えていき、現在は450人体制で1日7,000件の電話に応対しています」と大﨑氏は語る。

オペレーターを採用するのにも時間やコストがかかる。同社では、業務改革に合わせたシステム拡張により、オペレーターが使うシステムの数が増えていた。そのため、業務知識をつけて現場に着座するための研修に時間がかかるという課題があったのだ。

「お客さまの応対品質を担保する一方で、業務ニーズに対して、要望を受けた順にスピードを優先して対応していったため、継ぎ接ぎのシステムになっていたのです。例えば契約の内容を確認するのはこのシステム、手続きはこのシステムというように、オペレーターは10個のシステムを駆使してお客さま応対をおこなうという状態になっていました」(オリックス生命保険株式会社 ITアプリケーション開発部 マネジャー 木原 真一 氏)

(左から)オリックス生命保険株式会社 オペレーションデザイン部長 中村 徳彦 氏
ITアプリケーション開発部 マネジャー 木原 真一 氏

継ぎ接ぎシステムはIT部門の運用負担も大きくなっていた

「オペレーターが10個のシステムを駆使しなければならなかったのは、コールセンター専用のシステムを持っていなかったためです」(オリックス生命保険株式会社 オペレーションデザイン部長 中村 徳彦 氏)

オペレーターは顧客からの問い合わせ内容に応じて、必要な業務システムを起動し、複数の画面を切り替えて応対していたのである。ベテランのオペレーターであれば問題はないかもしれない。しかし、コールセンターのオペレーターは入れ替わりも多い。「教育する側も、学ぶ側も大変でした」と中村氏は語る。

もう一つの課題が、顧客単位ではなく、契約単位で管理をしていたことだ。「従来のシステムでは、複数の契約をしているお客さまの情報をまとめて見ることができなかったため、契約ごとに確認しなければならず、手間がかかっていました」(中村氏)

細かなところでは「生年月日を調べるにしても、あるシステムは西暦、あるシステムでは和暦が使われているなど、その辺もオペレーターの不満につながっていました」と大﨑氏は語る。

オペレーター業務の効率化に向けて、システム改修を決断

オペレーターに業務負荷がかかっていたことに加えて、改修の大きなきっかけとなったのが、システムトラブルによりお客さまの応対履歴、対応依頼の入力が一時停止したことだった。

このトラブルを機にシステム改修に踏み切った。システム改修の目的は、オペレーター業務を効率化すること。コール数が増えても人数を増やすことなく、応対できるような仕組み作りである。そのためまず行ったのが現状調査である。

コールセンター内の不満を解消するとともに、どのようにすれば業務を効率化できるかの方針を立てるため、単にヒアリングするだけではなく、システムを設計するメンバーがオペレーターの後ろに立ち、「一人あたりの電話をしている長さ、どのシステムを何秒使っているか、調べ物をしている間、お客さまをどのくらいお待たせしているのか、さらには後続の処理をする部門に伝えるための時間などを調べた」(中村氏)という。

プロジェクト期間は1年半、規模感からいうとかなりタイトなスケジュールでのリリースターゲットを設定した。

「すべての要望を受け取って2~3年後にリリースしても、そのときはまた違った要望が出ています。1年半というプロジェクト期間をフェーズに分け、最初のフェーズでは照会機能をリリースし、次のフェーズ後続部門につなげる仕組みをリリースすることを目指して取り組みました」(木原氏)

顧客データベースの再構築も行うなど、大規模なシステム刷新。「これだけの規模感のシステム刷新プロジェクトではかなり短期間で実現できたと思います」と中村氏は自負する。開発パートナーとして選ばれたのが、オリックス生命でコールセンターのシステム基盤構築として「PrimeTiaas(プライムティアーズ)」を導入するなどの実績があったSCSKである。

「スケジュールを守れるか、品質を担保できるか、業務の理解度があるかをチェックしました。SCSKはコールセンターシステム基盤などの開発実績があったことから、会社全体のシステム構成もある程度理解してもらえると思いました。UXデザインにこだわりたいこと、コンテナ技術などの新しい技術にチャレンジしたいことにも理解が得られたので、SCSKに決めたのです」(木原氏)

業務効率化のため、UXデザインにこだわった

今回のシステムはUXデザインにこだわっている。これまで10個のシステムで参照していた情報を1つの画面にまとめつつ、オペレーターが効率的に作業できるようにしなければならないからだ。

そこでプロジェクトには、UXデザインの専門会社も参画した。彼らが実際にオペレーターの導入研修を受けた上で、カスタマージャーニーマップを作成し、新システムのユーザー体験を考えたのである。

「今の若い人たちはスマートフォンでの操作に慣れています。そういう人たちも感覚的に操作しやすいUXを考えてもらいました」(中村氏)

「キックオフ時、デザイン会社に対して、実現性は意識せず、とにかく使いやすいデザインを作ってくれと要望していたときには、どのような画面デザインが上がってくるのか、うまくシステムとして構築できるだろうかと少し不安でした」(SCSK 金融システム事業部門 金融システム第二事業本部 総合金融システム第四部 第一課長 吉澤 徹平)

上がってきたメインの画面は、1画面に従来の10システム分の機能が凝縮されていた。顧客から電話を受けるとオペレーターは本人および契約内容を確認した上で、問い合わせ内容を聞いていく。その作業が効率的にできるように、必要な箇所を開いたり、縮めたりできるアコーディオン式の画面設計を採用することにしたのだ。

この画面設計を可能にするために採用したのがシングルページアプリケーション(SPA)である。SPAを使えば、操作のわかりやすさとレスポンスの両立ができるからだ。ただそのためには、入力値に連動して複数の画面が自動表示される機能、受電時の自動検索/表示機能が必要となり、どのように動くのが使いやすいかの基準を一つひとつ細かく決めなくてはならない。そのため、SCSKでは新技術に強いメンバーをプロジェクトにアサインし、要件定義フェーズから技術的に実現できるかの検証期間を設けた。ノウハウをためる支援チームが開発作業に先行着手することで、手戻りを最小限にしたのだ。

一方で、スケジュールは厳守する必要がある。

「通常、システム開発では、生産性を考慮して、すべてのフェーズを同一体制で開発しますが、今回のプロジェクトではフェーズごとに異なる体制を用意して、同時並行で開発を進めました。これにより、短納期での開発を可能にしたのです」(吉澤)

オペレーターの後処理時間の削減のため、新技術をどのように活用したのか。プロジェクトの成果を見ていこう。
後編に続く