今こそ、SAP S/4 HANAへの移行を実行するタイミング
アフターコロナで情報システムに求められるものは
アフターコロナで情報システムに求められるものは
SAPのメインストリームメンテナンスの延長に伴い、SAP S/4HANAへの移行は、近い将来の課題から中長期の課題へと変わった。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い生活や企業活動は一変し、アフターコロナを前提として考えなくてはならない。では、アフターコロナの時代、情報システムに求められるものは何だろう。SAP S/4HANAへの移行にはどのような意味があるのだろう。2020年7月に開催された「SAP S/4HANAマイグレーションセミナー: 2020」の講演から探った。

急激な環境変化に、どう対応すべきか

SAP ERPのメインストリームメンテナンスの延長が発表され、基本的に2027年、オプションによっては2030年までサポートを受けられるようになった。つまり、SAP S/4HANAへの移行は、近い将来の課題から中長期の課題へと変化したと言えるだろう。そのため、SAP S/4HANAへのマイグレーションにどのような価値を見出すのか悩んでいるユーザー企業も多い。

「2025年の崖への対応において、新たな技術で新たなビジネスモデルを創出するデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるには、技術的負債とも呼べるレガシーシステムの領域も何とかしなくてはならない。しかし、既存の基幹システムで十分に業務が回っているなかで、SAP S/4HANAへのマイグレーションにどのような価値を見出すのかを悩んでいるお客様が多いようです」(SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第一事業本部 ソリューション第五部 副部長 柏倉 正樹)

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い生活や企業活動は一変した。実際、コロナ以前、テレワークがこれほど一般的になると予想した人は多くはないだろう。今後は、アフターコロナを前提として企業経営や情報システムを考えなくてはならない。では、そのために何が必要になるのだろう。

「SCSKは、スピード、変化対応、システム力の3つが必要になると考えています。これらを獲得するためには様々な施策がありますが、そのうちの1つとして、サポートが延長された今だからこそ、SAP S/4HANAへのマイグレーションに取り組むべきではないかと考えています」(柏倉)

なぜいま、SAP S/4HANAへの移行を検討するべきか

では、SAP S/4HANA へのマイグレーションにはどのようなメリットがあるのだろう。同氏によれば、「人材」「ビジネス」「スピード・コスト」の3つだ。まず人材について、以下のような問題を指摘する。

「15~20年前、基幹システムを導入した当時に主力として活躍していた情報システム部門や業務部門のキーマンは現在、マネジメント職に就いていたり、異動したりしていて、当時のノウハウがきちんと継承されていないことがあります。そのため、既存システムがブラックボックス化しているケースが少なくないのです」(柏倉)

つまり、自社の競争力を支える業務プロセスがシステムにおいてどのように実現されているか、そのなかにどのようなデータが存在しているかを把握している人材が少ないのだ。こうした状況を打開する上で、SAP S/4HANAへのマイグレーションは絶好の機会となる。

「サポートの延長を受け、SAP S/4HANAへのマイグレーションは短期のプロジェクトではなく、いくつかのステップを組み合わせた、中長期的なスパンで段階を踏んで進められることが考えられます。このように複数のステップを踏んでいくことが、業務上の強みがどのようにシステムに実装されているのか、システムをどのように作り上げていくのかを再認識する機会となり、結果的に人材育成につながるのです。これが最も価値のあることではないでしょうか」(柏倉)

また、大規模プロジェクトを一気に進めれば、十分なテストシナリオやケースを準備できず、システムテストや本番稼働の段階で大きなトラブルが生じ、情報システム部門のメンバーに大きな負荷がかかったり、結果的にシステムコストが高くなったりすることも考えられるだろう。段階的に進めることは、こうしたリスクを抑えることにもつながるのだ。

さらに、新たなアーキテクチャやサービスを利用することは、新たなビジネスに直結する。

「昨今のコロナ禍で多くの企業が業績不振に陥るなかで、一部の企業では売上を伸ばしています。こうした企業は、デジタル技術を駆使してビジネスモデルを転換したり、業務を自動化したり、サプライチェーンを最適化したりしています」(柏倉)

DXを実現するには、柔軟なビジネスプラットフォームが必要となる。SAP S/4HANAへのマイグレーションを通じたビジネスプラットフォームの構築がDXにつながるわけだ。

そして、スピード・コスト面でのメリットは、クラウド対応によって実現される。ただ、オンプレミスで構築されている基幹システムをSAP S/4HANA Cloudに一気に切り替えるのは、まだまだハードルが高い。

次のステージに向けて、新たな価値を生み出すチャンス

「まずはハイブリッド型を目指し、次のステージとしてSaaS型を目指す、という2段階で臨むべきと考えています」(柏倉)

つまり、当初は「オンプレミス+クラウド」のハイブリッド型基幹システムで、インフラと特定のアプリケーションのみをクラウドに移行し、コア領域のアプリケーションはオンプレミスの形で自由度を持たせて利用できるようにするのだ。

SAP S/4HANA移行を成功させるには

SAP S/4HANAへのマイグレーションに向けて、SCSKでは「Add-Value for Migration」というソリューションを提供している。これは、多くのユーザー企業が抱いている「いつ何をしたらよいのか」「どれくらいの期間と費用がかかるのか」「プラスαの付加価値をどのように付けていけばいいのか」などの悩みに応えるサービスだ。

アプリケーション機能のアセスメントサービスでは、標準機能に加え、特にマイグレーションの影響が大きいアドオン機能についても、影響箇所はもちろん、その対応方法や実際の対応工数までを十分調査する。

PoC環境提供サービスでは、顧客またはSCSK内のサーバーにSAP S/4HANAへのマイグレーション後の環境を用意することで、ユーザー自身が実機を触りながら業務アセスメントを実施したり、PoC環境をそのまま開発環境として転用したりできるようにする。

そしてマイグレーションサービスは移行やテスト、教育、運用などSAP S/4HANAへの移行全体を対象としたプロジェクトそのものである。

「SCSKで定義している標準プロジェクトでは、アセスメントを含めた計画フェーズが3カ月、実施フェーズが12カ月の合計15カ月を想定しています。ただ、期間やコストなどは、お客様状況によって変わってきます。内製化が進んでいるなど『機能を改修し、最初の環境を用意してくれれば、あとは自分たちでやります』ということであれば、より短期間、例えば半年前後で、またコストも抑えての提供が可能です」(柏倉)

Add-Value for Migrationの特長は、SAP標準機能でのチェックに加え、独自のチェックロジックを付加するなど、アセスメントツールの性能とそのアウトプットの詳細さである。これにより、マイグレーションによる影響箇所やその修正方法、かかる工数なども含めた、より詳細な影響調査レポートの提供が受けられる。

また、「システムダウンタイム削減」や「テスト工程の効率化・省力化」などのオプションもサービスとして選択可能だ。ユーザー企業は、自社の重視する箇所とそうでない箇所を決めることで、コストにメリハリを付けてサービスを利用できる。

さらにSAP Intelligent Technoloryを採用すれば、マシンラーニングやアナリティクス、文書管理、AI予測といったプラスαの付加価値にもつながっていく。こうした機能と連携することで、変化へのスピーディーな対応が可能だ。SCSKが提供するシェアード型の運用サービス「AMOサービス」と組み合わせれば、IT投資の効率化につなげることもできるだろう。

SAP S/4HANAへの移行は、近い将来の課題から中長期の課題へと変わった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い企業活動が一変した今だからこそ、段階的にSAP S/4HANAへのマイグレーションに取り組む絶好のチャンスなのだ。人材育成やDXを実現するためのビジネスプラットフォームの構築、クラウド化によるスピード・コスト面でのメリットを享受する。そのための第一歩を踏み出してはいかがだろうか。