DX実現に向けたITインフラに、SAP® Cloud Platformが選ばれるわけ
SAP® ERPを導入している企業は、DX推進のためデータ連携ができるようにアドオン開発で関連業務のシステム化を進めている。しかし、アドオン開発ではSAP ERPのバージョンアップ対応が難しくなり、またERPの外側にシステムを開発すると、時間とコストがかかってしまう。これらの課題を解決するソリューションとして注目されているのが「SAP® Cloud Platform」である。その活用メリットを見ていこう。

ERPが抱えるアドオン開発の課題

現在、多くの企業が「2025年の崖」を乗り越えるべく、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。経済産業省はDXを、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義する。つまり、ここで定義されているDXとはSoE(System of Engagement)領域のDXである。

SoE領域のDXを推進するには、ERPなどに代表されるSoR(System of Records)領域のITインフラの整備が不可欠となる。しかし、SAP ERPを導入する多くの企業では、標準機能だけでは業務をまかないきれず、アドオン開発が欠かせない。実際、SAP ERPの開発でも、周辺の関連業務のシステム化ニーズが高い。

「アドオン開発した機能で自社特有の業務を処理するのは、SAP ERPの標準機能だけでは業務ニーズに対応できないからです。SAPは『Fit to Standard』を推奨していますが、日本ではなかなか実現できていないのが実情です」(SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第一事業本部 ソリューション第二部 第四課長 峰 さゆり)

「本来SAP ERPは経営者が経営判断をスピーディーにするためのソリューションです。しかし日本では、ERPが現場業務を回すためのツールになっています。そのため、どうしてもアドオン開発が増えてしまうのです」(Minoriソリューションズ ソリューション第一本部 ビジネスソリューション第一部長 浅田 匡和)

アドオン開発のメリットは個社の独自要件に合わせられること。だが、ERP内部にアドオンで機能を追加すれば、維持運用のコストが上がり、柔軟性が下がるだけでなく、バージョンアップの対応も難しくなる。これは、さらなる問題を引き起こす。

「バージョンアップ対応できないと、新機能を活用できないだけではなく、ITプラットフォームの進化にキャッチアップできません。これはITプラットフォームの進化が著しい現在、大きな問題です」(峰)

(左)SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第一事業本部
ソリューション第二部 第四課長 峰 さゆり
(右)Minoriソリューションズ ソリューション第一本部
ビジネスソリューション第一部長 浅田 匡和

DXを推進するためのITプラットフォーム

アドオン開発が抱える課題を回避する手段が、アドオン部分をERPの外側に開発する方法である。だが、それにも問題はある。アドオン部分をオンプレミスで開発すると、サーバーを調達して立ち上げる手間と時間が必要になることだ。しかも、システム稼働後は自前で運用管理しなければならない。

こうした課題を低コストかつ短期間でクリアする最適解として、今注目を集めているのが、SAPが提供するPaaS「SAP Cloud Platform」だ。SAP Cloud Platformを使えば、SAPが提供するSAP ERPの機能の拡張、APIの提供により多種多様なソフトウェアやSaaSサービスとの連携、新しいアプリの開発・提供などが可能になる。つまりERP本体に手を入れることなく、アドオン機能をクラウドに外出しして開発できるようになるのだ。

「SAP Cloud Platformを使えば、多種多様なアプリケーションを同じプラットフォーム上に載せることが可能になるので、システム連携の手間が減ります。これは、システム改修コストの大幅削減につながります。ある意味、SAP Cloud Platformは企業の経営資源である人・モノ・ビジネスを結ぶ、これからのDXを推進するためのITプラットフォームと言えるでしょう」(峰)

現在、情報システムはつねに改修・変更しながら、進化させていくことが求められている。そのため、システム連携の自由度が高いことは極めて重要なのだ。ただ、基幹システムをクラウド上に置くことに不安を感じる方もいるかもしれない。

「SAPデータセンターでは、包括的なセキュリティ対策がなされているので、データをクラウドに預けることは、実はオンプレミスに比べてセキュリティ面でも安心です。また在宅勤務やBCPの観点でも、現在、インターネット経由で業務システムにアクセスする仕組みを実現することは欠かせなくなっています。その意味でも、すでにSAP ERPを導入している企業は、SAP Cloud Platformの活用を検討するべきだと思っています」(浅田)

アドオン開発を切り分ける、SAP Cloud Platformの活用

ただ、SAP Cloud Platformを活用すればすべての機能を外出しできるわけではない。

「アドオンの中にはERP内部で開発しなければならない機能も少なくありません。また機能間をできるだけ疎結合で連携することも求められます。そのため、内部で開発する機能と外部で開発する機能をどのように切り分けるかが、開発を成功させる上での肝となるのです。特にSAP S/4HANA®はアドオン開発できる範囲が広いため、ERPの内側に作るのか外側に作るかの切り分けが重要になります」(峰)

ではどのように切り分ければいいのだろう。通常は、標準機能のメインのデータフローにどの程度影響を与えるかで判断するという。

「メインのデータフローに大きな影響を与える機能はERP内部で作り込み、補足データを付加するなど、メインのデータフローに影響を及ぼさない機能については外出しすると、うまくいくケースが多いと思います」(浅田)

「SAP ERPが提供する標準機能に緊密に連携する機能は、外出しが難しくなります。クラウドに外出しできるのは、標準機能から離れたシステム。その切り分けがうまくできないと、SAP Cloud Platformを十分に活用できません」(峰)

この切り分けの判断が、多くの開発実績を持つITベンダーのノウハウなのかもしれない。SCSKには20年に及ぶSAP ERPのアドオン開発の実績があり、300社以上にSAP ERPシステムを導入してきた。SAP S/4HANAに対応した「Add-Value for 手形管理」の開発実績はその一例だ。

「『Add-Value for 手形管理』では、手形のステータス管理をするアドオン部分と、決済処理を行うSAP ERP標準部分がうまく分離されていたため、SAP Cloud Platformへの移植に適していると考えました。移植にあたっては、豊富に用意されているAPIやデータの抽出・格納方法などの選定が重要になります。その経験とナレッジが私たちの強みです」(峰)

またMinoriソリューションズにはSoE領域における開発実績がある。日本プロサッカーリーグ(J2)に加盟している松本山雅FCがサポーター向けに提供している「シャトルバス位置情報サービス」は、SoE領域におけるDXの一例だ。

「このサービスでは、バスに搭載したIoTセンサーから位置情報をクラウドに集めて、スタジアム行きバスの位置情報をサポーターに配信しています。『いつバスが来るのかを知りたい』というサポーターから要望を受けた松本山雅FCからの依頼で開発しました」(浅田)

一方で、SAP Cloud Platformの導入には、技術者のスキル問題を解決しなければならないと言う。これまでSAP ERPに携わってきた技術者は、ABAPなどのSAP独自の技術に長けている。しかしながら、SAP Cloud Platformでは、Javaなどのオープン系の技術が必要となるからだ。

「SCSKは、SAP Cloud Platformを活用した『Add-Value for 手形管理』の構築などを通じて、双方の技術に明るい組織をつくり上げたので、技術のギャップを埋めることができました。またSAP Cloud Platformへの取り組みが始まったときに、オープン技術に詳しいMinoriソリューションズがSCSKグループに参画したため、技術交流が進み、SAP Cloud Platformを導入するスキルとノウハウが蓄積できたのです」(峰)

「SAP Cloud Platformの進化はこれからが本番です。DX推進のために企業ができることはもっと広がっていくでしょう。そして、データ利活用の準備や、経営判断に応じて柔軟かつスピーディーにシステムを改修・変更できるようにしておくことがDXの足がかりになるのです。今がSAP Cloud Platformを導入するチャンスではないでしょうか」(浅田)

SCSKグループでは、大企業向けには「SAP S/4HANA」と「SAP Cloud Platform」を組み合わせたソリューションを、中堅企業向けには「SAP® Business ByDesign®」と「SAP Cloud Platform」を組み合わせたソリューションを提供している。企業の規模や業態などに応じた最適なソリューションは、DXを実現する上での大きな一歩となるはずだ。

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