事例で見る、コンテンツ配信・最新事情 大容量ファイルの多拠点配信を考える
量販店、映像制作会社から製造業まで

量販店、映像制作会社から製造業まで
デジタルサイネージで流す動画や、製品マニュアル、カタログ資料など、大容量コンテンツを多拠点に配信する企業は少なくない。DVDなどのメディアを配布するケースが多いが、膨大な時間がかかり、コンテンツ更新を頻繁に行えないという課題がある。そこで今、この課題を解決できる方法が注目されている。いくつかの事例を基に、効率的なコンテンツ配信のあるべき姿を考えてみよう。

多くの企業が直面している大容量コンテンツ配信の課題

事業活動にITが不可欠なものとなる中、大容量のデジタルコンテンツの鮮度が求められている。例えば、複数の店舗を展開する小売業や飲食店では、商品の広告動画をデジタルサイネージで流すケースが増えている。また、製品マニュアルやカタログサポート資料などを全拠点に高頻度で配信し、営業活動に役立てたいと考えている企業も多い。

そこで課題になっているのが、大容量コンテンツをどのように配布するかということだ。サーバーに置かれたコンテンツに各拠点からアクセスする方法があるが、それには高性能な配信サーバーと広帯域な通信回線が必須になる。また、DVDなどのメディアに保存して配布する場合は、膨大な時間と手間がかかる。

ところが、新たな配信手段によってこの課題を回避することが可能なのだ。実際、様々な企業がこれを実現している。

一例が、ある家電量販店チェーンのケースだ。この企業では従来、売り場のデジタルサイネージやテレビに映す広告コンテンツを、DVDの郵送によって全店舗に配布していた。しかし、この方法では大量のDVDの作成と郵送に時間とコストがかかるため、キャンペーン情報などをリアルタイムに告知することが難しかった。また店舗側でも、DVDの交換やセッティングといった手間が発生する。これが情報の鮮度の維持や各店舗の要望への柔軟な対応を妨げていた。

従来の配信方式ではサーバーや回線への負荷が大きく、追加投資が必要。とはいえ、DVDを作成・ 配布する方法では時間がかかり過ぎ、情報のタイムリーな更新が難しい。

独自の「バケツリレー方式」で現行の回線を増強しなくても高速配信を実現

この企業が採用したのが、「SkeedDelivery」である。

SkeedDeliveryは、独自の自律分散ネットワーク技術により、多拠点に向けて高速に大容量コンテンツを一斉配信するソリューションだ。特長は「バケツリレー方式 」のデータ配信。具体的には、中央のデータセンターから各拠点に直接データを送るのではなく、A拠点からB拠点、B拠点からC拠点というように、データ転送を順次行っていく点にある。

また、いち早く受信が完了した拠点は、配信状況を自律的に確認し、まだ受信が完了していない拠点に向けて多重配信を開始する。これによりデータが全拠点に行きわたるまでの時間をさらに短縮。100拠点へ配信する場合、中央からの配信に比べて所要時間を1/100 以下に短縮できるという(※Skeed調べ)。加えて、すべての機能がソフトウエアだけで完結できる点は、ほかのコンテンツ配信の仕組みにない強みといえる。サーバー機器や広帯域な回線といった追加のハードウエア投資を行う必要はない。

独自技術に基づく「バケツリレー方式」のデータ配信で、回線の負荷を最小化しながらデータ配信を高速化。100拠点への配信の場合、所要時間を1/100以下に短縮できる(データセンター、各拠点共に回線速度が等速の場合)

SkeedDeliveryを利用すれば、DVD配布に比べて効率化が図れるのはもちろんのこと、従来型のオンライン配信に不可欠だった配信側サーバーの性能や、広帯域な回線がなくても、高速なデータ配信が実現できるようになる。

この家電量販店チェーンも、それまで拠点間をつないでいた通信回線の拡張や増設を一切行うことなく配信環境を構築できたという。

これにより、月34回しか更新できなかったコンテンツが週34回ペースで更新可能になった上、店舗の手間も大きく削減。かつてはこのDVD再生業務のために何十名もの社員が携わっていたが、現在はわずか3名で運用している。空いたリソースを販売業務に割り当てられるようになったほか、コンテンツ制作の時間も拡充して質的な向上も実現した。

さらに、品切れなどによって急なコンテンツ差し替えが必要になった場合も、迅速に対応できる環境が整った。これらを含め、トータルでのコスト・工数削減効果は、専用回線を敷設して運用した場合との比較で、年間数千万円に上るという。

また、あるハウスメーカーでは、膨大な建材のCADデータを、SkeedDeliveryでデータセンターから全国数百拠点に配信する環境を検討している。現在はDVDで配布しているが、それに比べて大幅にデータ更新サイクルを短縮できるという。ほかにも、社員教育用のeラーニングコンテンツ配信や、ホテルチェーンでのオンデマンド動画コンテンツ配信、映画館でのハイビジョン動画コンテンツ配信など、多様な業種で活用することが可能だ。

海外との動画のやり取りなどを70倍高速化できるソフトウエアも

このようにSkeedDeliveryは、多拠点一斉配信に関する既存の概念を覆し、課題を解決するものといえるだろう。

さらに、海外拠点など遠隔地との大容量ファイルの転送時間を劇的に短縮することが可能なソリューションもある。それが「SkeedSilverBullet」だ。このソリューションは独自のプロトコルを採用しており、帯域を自動制御できるため、安定的かつ高速に大容量ファイルを送信できる。

例えば、ドイツから日本に100MBのファイルを送信した場合、FTPに比べて70倍の高速化を実現した事例もあるという(※Skeed調べ)。この点が評価され、SkeedSilverBulletは、海外の制作会社とのデータの送受信が多いアニメーションスタジオやテレビ番組制作会社などで多く採用されている。

このほかにも、大容量ファイルを遠隔地と高速で同期できる「SkeedSync」や、メール感覚で大容量ファイルを送受信できる「SkeedFileMessenger」なども、デジタルコンテンツの配信の効率化を検討する多くの企業で活用されている。

一連のSkeed製品には試用版が用意されており、すぐに試すことができる。多額の投資を行わず、コンテンツ配信の最適化を考える企業は、まず検討すべきソリューションといえるだろう。