IoTの先進技術で、オフィスの働き方改革が加速する
働き方改革の一環として、オフィスの座席を固定しない「フリーアドレス」や、自宅やサテライトオフィスなどで働く「テレワーク」を取り入れる企業が増えている。このような、場所にとらわれない働き方を実現して効率アップや労働時間の短縮を図る動きは、今後もさらに加速するだろう。そこで、オフィスの働き方改革に、先進的なIoTソリューションを活用する事例と、そこから見える展望についてリポートしよう。

働き方改革の一環でフリーアドレスになったのだが…

かねてより働き方改革を進めてきたSCSKでは、「働きやすい、やりがいのある会社」を目指してさまざまな試みを行っている。まず取り組んだのは、長時間労働の是正・有給休暇の取得を目標とした意識改革と改善活動を進める「スマートワーク・チャレンジ」。続いて、場所にとらわれない柔軟な働き方を目指す「どこでもWORK」を推進した。

これらの施策は大きな効果をもたらした反面、課題も見つかった。そのひとつが、「どこでもWORK」の一環でフリーアドレスを導入したことにより、メンバーの居場所を把握しづらくなったことだ。

そもそも、オフィスフロアはかなり広く、死角もあるため、所属する部門内をすべて見渡せない。そのため、「メンバーがどこにいるのかわからない」「業務用携帯を持っていないメンバーと連絡を取りたいとき、どこに電話すればいいのかわからない」「オフィスで仕事をする人が多い日には、フリーアドレスの空席が見つけづらい」「在宅勤務中なのか出社しているのかわからない」という状況が起きていた。

そんな中、自部門が持つIoTの先進技術を応用すれば、社員の居場所が特定できるのではないかというアイデアが出た。それは、サーバーを介さず中継器同士が直接通信をすることでトラフィックの集中を回避し、最適な通信経路を自律的に見つける「P2P自律分散ネットワーク」の技術「SkeedOz(スキードオズ)」である。親機、中継機、ICタグをセットでオフィスに設置することにより、モノ同士をメッシュ状につなげるIoT無線ネットワークを構築し、ヒトやモノの位置を特定できるようにするのだ。

「SkeedOzはすでに、地方自治体向け防災・見守りサービスとしての導入実績がありました。ほかにも、イベントのような来場者の多い会場で特定の人を探すときなど、さまざまな用途が模索されていました。そこで、SCSKの社内でSkeedOzを使ったオフィスIoTの仕組みを作り、どう役立つのか部門内で試してはどうかという提案が出てきたのです」(SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第二事業本部 新ビジネス推進部 Skeed課 鈴木 利昌)

SkeedOzの中継器とICタグはコンパクトなので、簡単に持ち運べる

先進のIoT技術で社員の位置情報を可視化する

まずオフィス内の、あるエリアに複数の中継器を設置。電池が内蔵された小さなICタグを身につけることで、各社員が持つICタグから出す電波をキャッチできるようにした。電波を効率よく受信するためには中継器同士の間隔を調整する必要があったが、中継器は簡単に持ち運べるため、設置する位置や間隔、ICタグが出す電波の強さなどさまざまな条件を変え、約1年かけてデータを集めた。

SkeedOzの技術的な利点は3つある。1つ目は、キャリア網や既存ネットワークに依存せず、新たなIoT専用の通信網を構築できること。2つ目は、キャリア網を使わないため、安価にIoTの基盤を構築することができること。そして3つ目が、自律分散の技術によりネットワーク設定の必要がなくなり、容易に導入ができること。

「中継ノード同士を認識させてバケツリレーのように情報を伝えていくことは他社製品でもできますが、SkeedOzは中継ノードの稼働や負荷状況に応じて自律的に最適な情報伝達ルートを判断します。各中継ノードにおいてどの程度のリソースが使われているかを互いに認識する仕組みなので、ネットワーク負荷の少ないルートでデータ転送ができるのです。だから、ネットワークが途切れる可能性も低くなる。これは、SkeedOzだけが持つ強みです」(鈴木)

「ICタグから、電波を何秒に1度のペースで発信するかも、かなり悩んだポイントでしたね。社員の居場所を正確に把握するには、適切な発信頻度を見つける必要がありました。1年に1回、備品の棚卸しのタイミングで電池を交換することとし、電池を1年間持たせるために電波発信の頻度を調整の上、当初採用予定だった電池より一回り大きな電池に変えました」(SCSK ビジネスソリューション事業部門 AMO第二事業本部 新ビジネス推進部 Skeed課 鷲尾 純)

こうした取り組みにより、各社員は同僚たちがどこにいるのか、WEBブラウザから簡単に把握できるようになり、フリーアドレスの課題がひとつ解消できたのだ。

オフィスの在席状況をマップで確認できる「在席管理システム」のイメージ

位置情報が見えると次々と新しいアイデアが生まれる

こうして、社員の位置情報がリアルタイムで把握できるようになると、ほかの用途も見えてきた。例えば、座席だけでなく会議室の利用状況の把握、人だけなく備品の管理などへの活用である。

施設利用の可視化

社員の位置情報を把握することで、座席だけでなく会議室や打ち合わせスペースの稼働状況もわかるようになった。また、部署によってはフリーアドレス用に確保した座席スペースの7割程度しか使われていなかったため、座席数を減らし、打ち合わせスペースを拡大した。このように、オフィスの現状を正しく把握することでファシリティ利用の最適化を実現できた。

正確な出退勤管理への応用

働き方改革関連法が2019年4月より大手企業を対象に施行された。この法律で「客観的方法による労働時間把握の義務化」が明記されたことにより、電子記録媒体による履歴をきちんと残すことが義務化されている。ただ、タイムカードを使って出退勤を管理する場合、打刻忘れや不正打刻などのリスクがつきまとう。一方、中継機とICタグを使ったオフィスIoTソリューションで出入口の通過情報を取得すれば、ユーザーに負担を強いることなく、正確に労働時間を記録することが可能になる。勤怠管理システムと連携すれば、労務管理の省力化や見える化が図れるかもしれない。

中継器が最初に受信したログを「出勤」、最後に受信したログを「退勤」として勤怠を管理できる

備品管理にも活用可能

例えば、プロジェクターやPC端末、ホワイトボードなど、ICタグを社内の備品に取り付ければ、その所在や利用者が特定できる。また、紛失時の追跡も可能になる。あるいは棚卸しに活用するなど、煩雑な社内の備品管理が格段に効率化できるのだ。

社内コミュニケーションの改善

社員の位置情報を分析すれば、社員同士の関係性などの「コミュニケーションログ」がとれる。社員の行動パターンから、組織のキーマンの動線やコミュニケーション力の高い社員の行動パターンが見えてくる。あるいは、退職リスクの高い社員などを早めに発見し、適切なケアをすることも可能になるかもしれない。

このように、SkeedOz独自のネットワーク技術は、データの使い方やアイデアによって、様々な活用方法が考えられるのだ。

さらにオフィス以外での活用も広がる

SkeedOzが活用できる場は、オフィスだけにとどまらない。例えば、スーパーマーケットでの活用も始まっている。

「買い物かごにICタグを取り付ければ、来店客の動線が可視化できます。店舗レイアウトが適切なのか、狙った場所に来店客が集まっているのかなど、容易に分析できるのです。カメラを使って来店客の動きを分析するサービスもありますが、スーパーなどに導入するとひとつの店舗当たり数千万円単位の費用がかかります。一方、SkeedOzなら中継器とICタグだけ。十分の一以下のコストでトライアルが可能です。しかも設置と撤去が簡単なため、容易に多くの店舗の調査・分析ができ、お客様からの期待は大きいのです」(鈴木)

また、類似のサービスでは、座席位置確認や出退勤管理などの機能を、別々のサービスとして提供している場合が多い。しかし、SkeedOzは用途を限定していないため、多様な場面で手軽にトライアルができるのである。

社員の居場所がわからないというフリーアドレスの課題を解決し、オフィスの働き方改革をサポートするために始まったSkeedOzの実験。その結果、物品や施設の管理を効率化すること、あるいは、オフィスや店舗の動線を分析することなど、アイデア次第で活用の場が大きく広がることがわかった。そんな独自のネットワーク技術を持つSkeedOzのソリューションは、親機と中継機とICタグと専用のアプリケーション、それだけで試せるのである。

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