三菱地所グループのコミュニケーション基盤統合の効果は?
働き方改革の推進とコラボレーション活性化を実現
働き方改革の推進とコラボレーション活性化を実現
三菱地所グループでは、各社がコミュニケーション基盤を別々に構築・運用してきた。これが、グループ内の情報共有やデータの利活用を難しくしていたのだ。そこで、働き方改革と業務生産性向上を促進し、グループの総合力を高めるため、コミュニケーション基盤の統合を進めた。この統合が、三菱地所グループに何をもたらしたのだろう。

コミュニケーション基盤統合の背景

大手町・丸の内・有楽町エリアのオフィスビルや商業施設を中心とした不動産関連事業を展開する三菱地所グループでは、海外アセット事業やノンアセット事業の開拓など、新規事業の開発を積極的に進めている。

「三菱地所グループでは、新規事業を推進しています。すでに社員からの発案で、エレベーター内にコンテンツを配信するエレベーターメディア事業や、メディテーション(瞑想)で五感を刺激するリラクゼーションスタジオの開設など、様々なアイデアの新事業が生まれています」(三菱地所株式会社 DX推進部 主事 大原 悠司 氏)

新たな価値創造に向けて重要になるのが、働き方改革を進めつつ、業務生産性の向上を図り、グループの総合力を底上げする取り組みだ。そのため、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進とグループ全体のIT企画を担当する三菱地所のDX推進部では、コミュニケーション基盤の刷新が急務であった。

これまで、グループ各社が別々のコミュニケーション基盤を構築・運用してきたため、情報共有やデータの利活用が難しかったからだ。

「過去にも何度かNotesからの移行を検討してきましたが、ハードルが高いことから見送ってきた経緯があります。2021年の保守切れをひとつの区切りに定め、本社機能の移転と働き方改革の推進をきっかけに、本格的にデファクトスタンダードであるMicrosoft Office 365への移行を決めました」(大原氏)

コミュニケーション基盤統合のプロジェクトは、DX推進部と三菱地所グループのITを担うメック情報開発(以下、MJK)、そしてSCSKの3社を中心に進められた。

「SCSKは、Office365だけでなく、既存システムであるNotesについても深い知見を持っていました。こうした知見が、既存システムの棚卸し作業でも活かせると考え、お願いすることにしました」(メック情報開発株式会社 システム基盤部 次長 湯浅 枝里 氏)

まず、NotesからOffice365への移行において、検討ポイントを網羅的に整理するため、企画構想フェーズを設けて、SCSKのノウハウ・知見を基に方針・方向性について議論をすすめた。「働き方改革の実現」「業務生産性の向上」「三菱地所グループの総合力向上」をコミュニケーション基盤統合のゴールに設定。リモートアクセスやスマホからのアクセスなど、多様な働き方に対応しつつも、セキュリティの確保を図り、さらにデータの利活用やグループ企業間のコミュニケーションを促進するのだ。

(左)三菱地所株式会社 DX推進部 主事 大原 悠司 氏
(右)メック情報開発株式会社 システム基盤部 次長 湯浅 枝里 氏

基盤統合プロジェクトは、どのように進んだのか

グループ全体のコミュニケーション基盤の統合は容易でなかった。Notesだけでも600以上の独自アプリケーションを構築、運用していたからだ。アプリケーションは基本的にMJKが開発しているが、600ものアプリケーションの棚卸し作業や業務プロセスの見直しが必要になる。

「システム移行にあたっては、ユーザーが混乱なく業務を継続できるようにすることはもちろん、システムの構築コスト、運用コストも考慮する必要があります。そのためには、システムの棚卸しを、業務の見直しや標準化につなげることも重要と考えました」(大原氏)

まずは、Notesの棚卸しによって既存アプリケーションの機能を洗い出し、業務プロセスの見直しと同時に、グループ内で標準化を進める。その上で、必要な機能の適切な移行先を決めた。

「コミュニケーションを活性化させ、セキュアでガバナンスの効いたシステムを構築するために、『Notesアプリ移行とOffice365導入を、担当チームを分けて実施する』『中核サービスとしてExchange Online、SharePoint Online、Skype for Business Onlineを利用する』というシステム移行の基本方針を立てました」(大原氏)

コミュニケーション基盤統合のポイントは3つ。まず、これまでグループ各社ごとに運用されていたスケジューラーやメール、掲示板などをひとつのプラットフォームに統合すること。次に、グループ社員が組織を横断して自由に情報共有、ディスカッションすることによるコラボレーション促進。そして、リモートアクセス・スマホアクセスの実現だ。

導入にあたっては、他のクラウドサービスとの連携も含めたサービス利用の認証と高度なセキュリティの両立が必須になる。そこでシングルサインオンとデバイス認証にはSaaS型の統合認証基盤である「HENNGE One」を利用することにした。各サービスのユーザー認証やユーザーIDの管理を統合的に管理することで、セキュリティを確保する狙いだ。

一方で、ユーザー教育にも注力した。

「メールやスケジューラーといった全社員が日々最も利用しているツールが変化することから生じる生産性低下を最小限に抑えるため、様々な施策を実施しました。リリース時の業務への影響に配慮したことで、大きな混乱なく、システムを切り替えることができたと思います」(湯浅氏)

ユーザーの理解度に応じて、新システムの使い方や活用のコツなどを、集合研修だけでなく、Tipsやハンズオン形式の研修を実施し、きめ細かなサポートを提供した。さらにマニュアルやFAQといったテキストコンテンツだけでなく、動画コンテンツなども用意し、わかりやすさに最大限配慮したのだ。

コミュニケーション基盤統合の効果は

2019年1月、まず三菱地所を含む4社で本稼働し、その後グループ各社へ展開を進めた。

コミュニケーション基盤の移行により、同じ基盤を使うようになったことで、グループ間のコミュニケーションが活発になった。また、600以上あったNotesのアプリは6割程度削減され、グループ内で業務の標準化が進んだ。

「社員の働きやすさや生産性の向上と、セキュリティとの両立を強く意識してプロジェクトを進行しました。Office365だけでなく、他のクラウドサービスとの連携など、当初は想定していなかった課題にも、スコープを広げていきました」(大原氏)

リモートアクセスやスマホアクセスの促進やコミュニケーションの活発化のため、Skype for Businessの導入に加え、Microsoftから新たにリリースされたTeamsも展開した。できる限り利用の制限を設けずに利便性をあげるようにした結果、グループ内のコラボレーションが活性化し、新たなビジネス創出の土台となった。

「企画構想フェーズから基盤構築・運用まで、SCSKの協力によりコミュニケーション基盤を刷新することができました。一方で、三菱地所グループは各社個別の事情もあり、まだグループ全社への展開には至っていません。より広く利用されるプラットフォームとして、グループ全体でOffice365の活用をさらに進めていくために、今後もSCSKのご支援を期待しています」(大原氏)

三菱地所グループへのコアなサービスは、Office365を活用し浸透が進んでいる。しかし、グループ各社に展開する過程では、さまざまな新しい要件に直面する。例えば、Power Platformのような、Office365の機能拡充などへの対応が必要だ。働き方改革の推進とコラボレーション活性化の実現に向け、グループ各社の個々の業務課題にも向き合い、機能の追加やOffice365を利活用する取り組みは今後も続いていく。