AIと共存する未来、他者や多様性を受け入れ、楽しむ心を育む
2001年に始まって以来、約2万2,000人が参加しているこども向けワークショップ「CAMP」。ものづくり体験や他者との共同作業などを通じ、こどもたちに「ものを創り出す楽しさ」や「他者とコミュニケーションする楽しさ」を味わってもらう場だ。AIの進化やグローバル化などで激変する時代において、こどもたちに求められる力を伸ばす。その思いが、CAMPの原動力となっている。

変化の激しい時代、未来を担うこどもたちに求められる力

こどもたちを取り巻く生活環境はIT化で大きく様変わりしている。現代のこどもたちには、AIやロボットなどの新技術を上手に使いこなすことが求められる。また、インターネットの普及などによりボーダレス化が進む世界では、世界中の人々と共に学び、共存することを覚えなければならない。

こうした中、こどもたちが身に付けるべき能力も変わってくる。デジタルを上手に利用して新たなものを創造する力と、人種や性別、育った環境の違いなど多様性を受け入れ、協力しながらものづくりをする力を引き出すことで、こどもたちがその無限の可能性を発揮し、これからの未来社会を先導していってほしい。その強い想いが、CAMPの原点にある。

「CAMP設立のきっかけをつくったのは、CSK(現 SCSK)創業者の大川功でした。私たちはIT企業として、顧客企業や地域社会、そして世界中の人々とつながり、皆様の課題を解決することを企業活動の中心においています。そうした中、こどもたちに感性や自由な発想力を伸ばす場を提供して社会貢献したいと考えた大川が、2001年、関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)に研究施設『大川センター』を設立。ここから、CAMPの活動が始まりました」(SCSK 総務・IR・広報・サステナビリティ推進グループ サステナビリティ推進部 環境・社会貢献課 村田 香子)

スタート直後は大川センターのみで活動を行っていたが、その後活動は広がり、2002年からは、出張ワークショップの「おでかけCAMP」を実施するようになる。さらに2004年には、運営スタッフ育成やワークショップのパッケージ化を進め、誰でもCAMPワークショップを運営できる「あちこちCAMP」が完成した。

「現在は東京の晴海にあるSCSKの施設『CAMPスタジオ』を中心に、SCSKやSCSKグループの各拠点で、年十数回のワークショップを定期開催しています。また、『おでかけCAMP』や『あちこちCAMP』に参加されるこどももたくさんいらっしゃいますね。2019年3月時点でのワークショップ開催回数は、全1,124回。のべ2万1,917人のこどもが参加しています」(村田)

CAMPワークショップのコンセプトとは

CAMPでは、バラエティ豊かなワークショップが開かれている。どれも、創作体験や共同作業、作品の発表を通じ、「考える・つくる・つながる・発表する・ふりかえる」という5つの要素を楽しめる仕掛けだ。それらのベースにあるのは、こどもたちが自分に合った表現方法を見つけ、コミュニケーションの輪を広げていくというコンセプトである。

「スタジオや会場には、リボンやモールなど身近な素材や、コンピュータなどのデジタル機器が用意されています。そして多彩なものに触れながら、その場で初めて出会った仲間と一緒に夢中になって取り組むことで、こどもたちの成長を促すのです」(村田)

これまでに開発されたプログラムは60種類以上。近年では、SCSKの社員ボランティアが開発段階から参加するものも珍しくない。また、写真家の広川泰士氏や造本作家の駒形克己氏、美術家の西尾美也氏といった外部のアーティスト、国内外の大学・研究機関、企業、NPOなどとコラボレーションするなど、つねに新たなアプローチを行っているところだ。

「今のこどもたちは、インターネットを当たり前に使っている『デジタルネイティブ』です。ただし、人とつながる手段はデジタルツール以外にもたくさんあります。私たちはIT企業ですが、CAMPではデジタルにこだわることはしません。アナログな道具も使い、ジャンルにこだわらずこどもたちに楽しんでもらうプログラムを提供しています」(村田)

CAMPで行われる代表的なワークショップ

CAMPで開催されているワークショップの中から、ユニークなものや人気のものをいくつか紹介しよう。

(1)CAMPクリケットワークショップ(小学1年生~)

米国マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボで開発された乾電池式の小型コンピュータ「クリケット」を使い、グループで動くおもちゃをつくる。小学校低学年でもプログラミングの楽しさに触れられるとあって、とても人気のあるプログラムだ。

(2)CAMPナリグラムワークショップ(小学4年生~)

東京大学大学院 情報学環 学際情報学府の山内研究室と、システムアーティストの安斎利洋氏との共同開発。こどもたちが採取した音をソフトウェアに取り込み、つなげたりループさせたりして楽しむ。実際に遊んでみると非常に楽しく、リピーターが多い。

(3)CAMPくうそう・しょくぶつ・図鑑ワークショップ(小学1~3年生)

「なぞの種」から、どんな芽が出て花が咲くのか想像し、色とりどりの素材で新しい植物を造形する。このプログラムも、1人ではなく仲間とアイデアを共有しながら作る。小学4年生以上向けの姉妹プログラム「CAMPすいそく・かいぞく・図鑑ワークショップ」もある。

(4)CAMPフリフリすごろわワークショップ(小学1~6年生)

NPO法人Collableと共同開発。すごろくで止まったマスの出来事をつなぎ、グループで短いストーリーを組み立てる。挿し絵を描いたり、仮装をしてキャラクターを演じたりするなど多面的な楽しみ方が可能。

(5)CAMP発明ワークショップ(小学4年生~)

NPO法人日本創造力開発センターとの共同開発。「700系」新幹線の先頭部分がカモノハシのくちばしをヒントにしてつくられたように、動植物の特徴やすごい仕組みをたくさん挙げ、それをヒントにして新たな発明品を考え、実際に形作っていく。最後はグループで、使い方についての発表を行う。

 

こうしたワークショップは、常に進化を続けている。例えば「発明ワークショップ」では、会場に用意された図鑑などを参考にしながら発明品をつくるが、過去には水族館に出向き、実際の魚や動物の生態からヒントを得たこともあった。

「自分の目で見て、『どうしてこの魚はこんな動きをするのだろう?』などの疑問をワークショップにおいて感じることで、こどもたちの五感は大いに刺激されます。おそらく、学習効果も高かったのではないでしょうか。また、ご協力いただいた水族館の側も、普段とは違う切り口でこどもたちに施設を楽しんでもらうというメリットがあったようです。今後も、いろいろなコラボレーションを模索したいですね」(SCSK 総務・IR・広報・サステナビリティ推進グループ サステナビリティ推進部 環境・社会貢献課 新谷 美和)

SCSKが社会貢献活動に取り組む意義とは

CAMPのワークショップの運営には、専任スタッフだけではなく、SCSK社員や社外からのボランティアスタッフ、すなわち「ファシリテーター」も数多く加わる。ファシリテーターに求められる役割は、こどもたちを指導することではなく、こどもたちが楽しく創作活動に熱中できるようにサポートすることだ。その能力をしっかり身に付けてもらうため、ファシリテーターには全員、研修会の受講が義務付けられている。

ファシリテーターとなる社員もこの研修会を通じ、話を聞き出す力や、相手の立場になって考える力を学ぶ。CAMPの目的は社会貢献だが、人材育成の側面も併せ持っている。それがCAMPの広がりをさらに加速しているのだ。

「SCSKはIT企業として、AIが進化した未来を担うこどもたちに必要な能力を育む場を提供することで、持続可能な社会の発展に寄与する責務があると考えています」と、SCSK 総務・IR・広報・サステナビリティ推進グループ サステナビリティ推進部 環境・社会貢献課長 田中 雅裕は語る。

その指針の1つは、OECD(経済協力開発機構)の「Education 2030 プロジェクト」だ。指針には、将来的に「新たな価値を創造する力」「対立やジレンマを克服する力」「責任ある行動をとる力」という3つの力を育成する必要性が掲げられている。

「CAMPはこれまで、意義のある活動をたくさん積み重ねてきました。でも、まだやれることはたくさんある。例えば、現在のCAMPは小学生から中学生までが対象。でも、今後は高校生以上に対しても、3つの力を育てるプログラムを提供したいと考えています。このあたりは、東京大学の山内研究室とも協力しながら進めるつもりです」(田中)

SCSK 総務・IR・広報・サステナビリティ推進グループ サステナビリティ推進部 環境・社会貢献課 村田 香子(左)、新谷 美和(中)、田中 雅裕(右)

20年にわたる歴史を刻んできたCAMP。かつてCAMPで学んだこどもたちは大学生になり、やがてファシリテーターとして今度はこどもたちを支える側になる。CAMPによって成長し、社会に出て、次の時代を牽引する。そんな将来を楽しみに思う。

今回紹介したCAMPの活動は、こちらに詳しい情報が掲載されています。